日本三大囃子「神田囃子」「祇園囃子」「花輪囃子」を知ってますか?

日本三大囃子「神田囃子」「祇園囃子」「花輪囃子」を知ってますか?

祭りといえば太鼓と笛による祭囃子を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?祭囃子は全国各地に地域に根付いた囃子があり、それぞれ個性が際立ちます。

祭囃子も地域によって使用する楽器が違ったり、曲の構成や曲調も変わります。祭囃子は故郷の音であり、遠い記憶に紐づく懐かしい音色なのです。

そんな祭囃子の中にも日本三大祭囃子と呼ばれているものがあります。それが「神田囃子」「祇園囃子」「花輪囃子」です。

今回は日本三大祭囃子について紹介します。

神田囃子

神田囃子は、東京都指定無形文化財にも指定されている東京が誇る郷土芸能です。神田囃子の歴史は江戸時代に葛西で起こった葛西囃子から発生したものという説があります。当時神田祭では葛西の囃子方に依頼し山車や屋台で演奏してもらっていました。

神田囃子の成り立ちを神田囃子保存会の会長 立野喜久雄さんは「当時、神田須田町に住んでいた青山啓之助という祭好きの職人が音頭を取って講師を呼び、町会の人達と囃子を習い始めました。」と語っています。そこから神田祭りでは専属の囃子方が生まれ、神田囃子保存会が結束されて現代に続きます。

また、神田囃子を代表する江戸囃子は建久3年(1192年),源 頼朝公が征夷大将軍に任ぜられ,鶴岡の神社前で盛大な祭りが行われたときに,五人囃子を奉納したのが始まりとする説もあります。

江戸囃子の特徴である大太鼓(長胴太鼓)、締太鼓2台、篠笛、鉦の5人1組の「五人囃子」の編成です。同じ江戸囃子系列でルーツでもある葛西囃子と比べると、神田祭に奉仕する神田囃子は間を大きく開ける、ゆっくりめの「大間(おおま)」が特徴です。神田囃子は間が大きい囃子なのです。

曲は組曲形式で締太鼓から始まる「屋台」→「昇殿」→「鎌倉」→「仕丁舞」→「上がり屋台」と続き、江戸囃子はすべて同じ構成となっています。

江戸当時は組曲ではなくそれぞれが独立した曲であったと言われており、現在の演奏形式になったのは明治以降であると言われています。葛西囃子系の曲だけでなく神田囃子には「神田丸」「亀井戸」「麒麟」「鞨鼓」といった独自の曲もあります。

神田囃子は神田祭(5月12日~5月16日)に奉仕されます。江戸時代から続く江戸のリズムを体験したい方はぜひ神田祭に足を運んでみてください。

神田囃子の特徴

神田囃子は江戸囃子に特徴的な5人囃子の形態を取り、スピード感溢れる浮かぶような締太鼓のリズムが特徴的です。また、他の囃子と違ってゆったりとした楽曲が目立ちます。

流暢で緩やかな音色や締太鼓と笛が絡み合うような曲展開が魅力的です。笛の旋律は懐かしさを感じさせるため、聞くと遠い昔の情景を思い出させてくれます。


鉦の音は祇園囃子と違って主張が弱く、リズムを支える柱となります。大太鼓(長胴太鼓)の音は節の代わりを伝え、締太鼓の刻むリズムのベースに色を足します。江戸時代から受け継がれる技術は口伝によって受け継がれていますが、口伝ならではの「訛り」が反映されており、江戸の音を現代にも再現しています。

祇園囃子

祇園囃子は「コンチキチン」という鉦の音が有名で、京都で行われる祇園祭で演奏される祭囃子の総称です。地域や地区によって曲目、楽器構成が異なります。7月の間行われる祇園祭の中でも、山鉾巡行は重要無形民俗文化財にも指定されていおり、祭りの醍醐味となります。

祇園囃子は締太鼓、能管、鉦の3種類の楽器を、鉾山車の上で演奏されます。貞観11年(869年)に始められたと言われている祇園祭の長い歴史の中の中で囃子は個性を持つようになりました。鉾の上で能や狂言を演じた名残が祇園囃子の発祥ともとも言われています。囃子は疫病のもととなる悪霊を誘き出し、賑やかな囃子の音で楽しませた後蔵に閉じ込めることが祇園祭の役割です。その中で祇園囃子は各地域ごとに発展していきました。

祇園祭発祥当時は様々な芸能集団が存在しており、田楽座や猿楽座の各芸能集団が囃子に対して影響を与えていたのではないかと考える研究者も少なくありません。少なくとも当時の囃子方には田楽法師などが関連していたと考えるのは難しくありません。現在は各鉾の町衆が囃子方を務めていますが、昔は鉾のスポンサーである旦那衆が芸能人を雇って鉾の上で演じさせてお祭りを楽しんだとも言われています。

曲は1分~1分半くらいで、朝日・青葉・獅子・扇・九段・巴・四季・緑といったなどの20~30曲を組み合わせて演奏します。同じ曲を何回か繰り返し、巡行の進み具合を考えながら次の曲へと移ります。巡行の進み具合で演目する曲が決まっているものもあり、例えば八坂神社へ向かうときは地囃子・神楽・唐子を演奏します。音の特徴として「鉦」の音が目立つ曲構成で、鉦のリズムに合わせて笛を吹き、太鼓を打つ傾向にあります。

祇園囃子は毎年7月に行われる祇園祭で見ることができます。1ヵ月の祭りの中で山鉾は月の中旬に行われる前祭、後祭での山鉾巡行で聞くことができますのでぜひ足を運びその目で大迫力の祇園囃子をお楽しみください。

祇園囃子の特徴

鉦が主となる曲構成で、全体的に鉦の音をベースに笛の旋律が乗る印象です。太鼓の音は全体の統制をとる役割もあるため、祇園囃子における太鼓は全体を調和させる重要な役割を担っています。

鉦の音が独特のため太鼓と笛の演奏をする奏者はまず鉦の譜面を体に染み込ませるそうです。それほどもまでに独特な鉦の音が特徴的です。

太鼓と笛は口伝ですが鉦は楽譜があります。祇園囃子を聞く際には鉦の音に注目して聞いてみると新しい発見があるかもしれません。

巡行では四条河原町までがゆったりしたスローテンポの渡り囃子を演奏し、辻回し後の河原町からは浮き浮きした曲が多い戻り囃子となります。この戻り囃子が祇園囃子で最も有名な「コンチキチン」という鉦の音を聞くことができます。

花輪はやし

花輪はやしは、秋田県無形民俗文化財、重要無形民俗文化財に指定されているお囃子で、毎年8月19日・20日に秋田県鹿角市にある幸稲荷神社に奉納される祭囃子となります。

鹿角市の夏の終わりを告げる行事として愛されています。2016年には「山・鉾・屋台行事」(33件)のうちの1件としてユネスコ無形文化遺産に登録されています。日本のみならず世界的にも評価されている民族芸能です。

花輪はやしは花輪地区の総鎮守、幸稲荷神社の祭典で、歴史は長く建設時の元久元年(1204年)から続いていると言われていますが、1470年に起きた火災により以前の史料が消失しているため正しい歴史は不明となっています。

平安時代から続く歴史のある祭りで、豪華絢爛な10台の屋台が特徴的です。囃子は平安時代末に笛による曲が形成され、その後太鼓や鉦、三味線が加わったと言われています。祭りが現在の形になったのは江戸時代末期と言われています。

花輪はやしは本ばやし・二本滝・宇現響・羯鼓・霧ばやし・矢車・吉原格子・拳ばやし・不二田・祇園・追込・シャギリの12曲が現在伝承されています。腰抜け屋台と呼ばれる底がない屋台に囃子方は乗り込み、囃子を演奏しながら町内を巡行します。

花輪はやしの特徴

花輪はやしは祭囃子の中でも特徴的な三味線の音色が上げられます。東北地方の祭囃子では三味線を加えていることも珍しくはありません。祭囃子といえば江戸囃子を思い浮かべる方が多いため新鮮に聞こえるかもしれません。

跳ねるような音が特徴的で囃子方は歩きながら打つため複雑な手ではありません。三味線の音によって音の軽やかさが他の祭囃子と比べて特徴的で落語の出囃子や歌舞伎の下座音楽に近い曲展開です。

華やかな曲が多く、江戸囃子とはまた違った浮かぶようなリズムが特徴的です。特に三味線の音色が笛の旋律と絡み合うことで花輪はやし独特の華やかさを演出しています。

まとめ

祭囃子は日本全国に分布しいます。そのため、各地域ごとに独自の文化があり、独自の音を形成しています。また、祭囃子は日本人にとって懐かしさを感じさせるノスタルジックな音でもあります。

祭囃子の中にある地元の伝統的なリズムや旋律を知ることで、和太鼓の表現幅が広がっていきます。ぜひ一度地元の音に耳を傾けてみてください。

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