重要無形民俗文化財「板橋の田遊び」を見に行こう!田楽系の予祝行事を楽しむポイント
- 2020.02.04
- 伝統文化
毎年2月11日、2月13日に行われる「板橋の田遊び」は板橋区徳丸本町の北野神社の祭(2月11日)、赤塚大門の諏訪神社の祭(2月13日)の2回に分けられて奉納されます。
国指定文化財の内、重要無形民俗文化財の中で田楽に属する芸能は全部で25種あります。その中で「板橋の田遊び」は関東圏内で唯一田楽系の芸能で重要無形民俗文化財に指定されています。
また、重要無形民俗文化財の指定は1975年(昭和50年)の文化財保護法の改正によって開始されましたが「板橋の田遊び」は1回目に指定されており、重要無形民俗文化財としても長い歴史を持つ芸能です。
今回は関東で見ることができる唯一の田楽系重要無形民俗文化財「板橋の田遊び」の魅力を紹介します。
板橋の田遊びとは
板橋の田遊びは東京都板橋区徳丸・赤塚地域に伝わる民俗行事です。
田遊びは、旧正月にその年の五穀豊穣と子孫繁栄を祈願し神に奉納する予祝行事で、新春に行われる場合が多いです。地域によって田遊びは御田、御田祭、春鍬、春田打ちなど様々な呼び方をします。
また、田遊びから発展して「田楽」は生まれました。田楽は田遊びの豊作を祈願する耕田儀礼の伴奏と舞踊だったものが、仏教や鼓吹と結びついて一定の格式を整え芸能として洗練されていったもので、神事での奉納の舞として神社や寺で演じられました。
板橋の田遊びは北野神社で演じられる「徳丸北野神社田遊び」と諏訪神社で演じられる「赤塚諏訪神社田遊び」の2つの田遊びを総称した名称となります。
どちらの田遊びも共通して「稲作の作業内容を唱える言葉と所作を田の神に奉納し、豊作を祈願する予祝の祭り」となりますが、それぞれ演じられる内容は異なるため、見どころが異なります。
徳丸北野神社田遊び
徳丸地域に古くから継承された田遊び神事である「徳丸北野神社田遊び」は北野神社創建の日である2月11日の夜に行われます。
拝殿前に田遊びの舞台となる二間四方のモガリ(舞台)が作られます。四方には忌竹を立て、注連が張り巡らせられます。その中央に宮太鼓(長胴太鼓)が置かれます。宮太鼓は田遊びの主楽器であり、田遊びのシンボルになります。
田遊びに携わる人の役割は、祭を主導する「大稲本」・それを補佐する「小稲本」・稲を象徴する「早乙女」・「鍬取り」で構成されます。
この構成は「徳丸北野神社田遊び」、「赤塚諏訪神社田遊び」共通です。
その後「町歩しらべ」「種まき」「胴上げ」「稲むら積み」「倉入れ」までの稲作の作業内容を2時間ほどで模擬的に行います。
「種まき」では太鼓の音や囃子唄の調子に合わせて、四方に向かって種をまきます。その後子どもが扮する早乙女を1人づつ順番にモガリの中央に設置された太鼓に乗せ、一同で「胴上げ」をします。胴上げは苗の成熟と子どもの成長、子孫繁栄を込め田の神である穀霊に祈願します。
胴上げの時にたいまつに導かれた「ひるまもち」と子孫繁栄を象徴する人形「よねぼう」が踊りながら登場します。また、面を付けた「太郎次」と妊婦姿の「安女(やすめ)」の夫婦、獅子、破魔矢(はまや)がそれに続きながら舞い場を盛り上げます。モガリへ向かう途中の「よねぼう」や「安女」には子宝に恵まれるという伝承があり、観客はおなかに触ろうと手を伸ばします。田遊びが最も盛り上がる瞬間となります。
続いて太鼓の上に田遊びの用具一切を積み上げ、稲むらをほめて、田遊びは終了します。
田遊び神事では穀霊が儀礼に感銘を受けて五穀豊穣という結果を与えてくれると伝承されています。
1000年近い歴史がある徳丸北野神社田遊びは古くから姿かたちを変えずに伝承され、現在も変わらずに地域の中心となる祭事として存在し続けています。
徳丸北野神社田遊び
場所:北野神社 徳丸6-34-3
日時:2月11日午後6時から2時間程度
備考:境内にて実施されます。
アクセス:
[徒歩]
・東上線東武練馬下車20分
・三田線高島平駅下車20分
[バス]
・東上線成増駅下車、赤羽駅行き紅梅小学校下車5分
・三田線高島平駅下車、東武練馬駅行き徳丸六丁目下車5分
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/003/003809.html
赤塚諏訪神社田遊びについて
「赤塚諏訪神社田遊び」は赤塚地域に古くから継承された田遊び神事であり、近隣の神社である徳丸北野神社田遊びと同じく五穀豊穣を願う予祝行事です。
田遊びで使用されるモガリは徳丸北野神社と基本的に同じですが、演じられる内容は異なります。
赤塚諏訪神社田遊びではモガリの外に出て行う演目があり、境内内では同時進行でどんど焼きが行われます。
行事が行われる時間帯も異なり、赤塚諏訪神社田遊びは1時間ほど遅く始まります。
徳丸北野神社田遊びと赤塚諏訪神社田遊びは行われる演目の順番や所作に違いはありますが、唱え言葉の節回しなどはほとんど同じ内容です。
赤塚諏訪神社田遊びは「神輿渡御」→「槍突き」→「天狗御鉾の舞」→「お篝り(おかがり)」で構成されています。徳丸北野神社田遊びと違い神輿や天狗の地鎮の舞といった特徴が目立ちます。
赤塚諏訪神社田遊びは、御魂の移った神輿を担いで入場し、田遊びが始まります。「もがり」の上に安置された「御神輿」に宮司の祝詞奏上が終わると、鍬とりの一同によって「五月女」呼び込みがおこなわれます。その後神輿は浅間神社のお祭り広場まで運ばれます。
神輿は天狗によって先導されます。笛の旋律とともに町を歩きます。広場では獅子舞による九字の舞が奉納され悪疫の退散が行われます。
赤塚諏訪神社田遊びは神楽に見られる演舞を主とした演目が行われていきます。
神輿が拝殿前に戻り安置されると天狗が右手に大きな幣、左手に錫杖を持って、モガリの前で地鎮を意味する御鉾の舞を行います。田遊びの最後に境内では旧年中の災厄や不幸を焼き払い、新年の家内安全と子孫繁栄を祈って、お篝りが行われます。
赤塚諏訪神社田遊びはモガリの外で行われる演目が見どころで徳丸北野神社田遊びとは違う魅力があります。
どちらの田遊びもモガリの中心に置かれた太鼓が主楽器となります。また太鼓の音に合わせて舞が行われ五穀豊穣を願う祭事です。
赤塚諏訪神社田遊び
場所:諏訪神社・大門11-1
日時:2月13日午後7時から2時間程度
備考:境内にて実施されます。
アクセス:
[徒歩]
・東上線下赤塚駅下車25分
・有楽町線地下鉄赤塚駅下車25分
・三田線新高島平駅下車15分
[バス]
・東上線成増駅下車、赤羽駅行き赤塚八丁目下車5分
・三田線高島平駅下車 区立美術館経由成増駅行き大門竹の子公園下車1分
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/003/003809.html
まとめ:板橋の田遊びを楽しもう
板橋の田遊びは田遊びの本来の姿を当時から変えずに現在まで継承させている大変珍しい芸能であることもあり、当時の香りを感じることもできる貴重な芸能となります。
1年に1度しか行われない祭事のため大変貴重です。 ぜひ貴重な機会を逃すこと無いように時間があれば足を運んでみてください。
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