コロナ時代における和太鼓の未来|和太鼓と人の接点の変化
- 2020.11.16
- 和太鼓
皆さまこんにちは。
和太鼓集団鼓蓮の団員兼、太鼓日和のライターをしておりますユウトです。
2020年は人類史初の地球規模による新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界経済に大きな打撃を与え、文化や芸術も存続の危機に直面することとなりました。
世界中で不要不急のものを自粛し、生活する上で必要不可欠なモノにのみ活動範囲を狭め、少しでも感染を食い止める動きが起こりました。
2020年11月時点では少しずつ緩和されている部分はありますが、依然としてコロナウイルスの驚異は治らず、多くの業界で価値観や在り方に大きな変化が起ころうとしています。
そんな時代において和太鼓業界もまた大きな変化の渦中におり、今後の選択によって和太鼓業界全体が活性化するか、それとも勢いが落ちてしまうのかの分岐点にあると言えます。
当サイト「太鼓日和」もコロナ禍の影響で母体団体である和太鼓集団 鼓蓮の活動休止を受けたことや和太鼓のみならず郷土芸能や伝統芸能において活動自粛が起きたことで一時更新を停止しておりました。
今回、和太鼓業界では常にトップを走り続けている太鼓芸能集団 鼓童が創立40周年の記念公演「鼓」を開催することを受けて、和太鼓業界も「コロナとの共存」「アフターコロナ時代の在り方」「和太鼓という楽器の未来」について考えていくべきだと思い筆を取りました。
新しい価値観が生まれ、コロナ以前の常識は通用しなくなる「パラダイムシフト」が起きている今は見方を変えればチャンスであり、和太鼓がより広く深く身近な存在へなる可能性があります。
本記事は連載企画として第1回は和太鼓集団 鼓蓮所属 太鼓日和ライターのユウトが思うコロナ時代の和太鼓について記させていただきます。
ぜひ、「アフターコロナ」「Withコロナ」の世界で和太鼓が世界と関わり続けられるか共に考察していきましょう。
コロナの影響による変化した和太鼓集団 鼓蓮の活動について
私が所属する和太鼓集団 鼓蓮もコロナの影響を受け活動に大きな打撃を与えました。
2020年4月12日に開催を予定していた「和太鼓集団 鼓蓮 結成1周年記念公演」はコロナの世界的流行を受け開催を中止になりました。
また、鼓蓮としての活動自体も代表向井を中心にメンバー全員で話し合いをした結果「コロナが落ち着くまで活動休止」とし、2020年11月現在においては年内まで活動休止となる見通しです。
それぞれメンバーごとに事情があり、仕事があり、家族がいるため和太鼓集団 鼓蓮としての活動よりもそれぞれが自身の生活を健康に営み、元気な状態で活動再開できることを最優先としたためです。
これは私たちが和太鼓活動で生活費を稼ぐ職業としての太鼓打ちではないことや、自身の稽古場を保有し、その維持費が発生する、スクールを経営しているといった背景がないことも活動を無期限で休止するという決断に至った理由の一つでもあります。
この決断において私個人としては正しい判断をしたと思っています。もちろん鼓蓮が結成されて1年でこれから活動を活発にして行こうというタイミングでの活動休止は大打撃ではありますが、それも健康であってこそ。また、心のどこかで「もし感染したらどうしよう」という不安を抱えて活動をするのはメンタル的にもよくなく、逆にモチベーションの大幅な現象に繋がると思われるからです。
ただし、私たち鼓蓮は1年間の大きなブランクを得ることとなり活動自体に曇りが見えてきたのは確かです。今までと元通りな状態で再開できることは難しいでしょうし、和太鼓活動から離れたことで少なからずメンバー内での鼓蓮に対する考え方や捉え方の変化が生まれているはずだからです。
だからこそ、この未曾有の事態において生まれた新しい価値観と新時代における和太鼓との向き合い方を考えることが重要であると私は考えます。
コロナによって変化した「和太鼓と人の接点」
コロナの世界的流行により音楽や芸術、芸能や舞台など様々な領域に深刻な打撃を与え、カルチャーそのものの消滅や不要不急と称され仕事を失った方まで現れ、補助や支援も十分ではない中、苦汁を飲みながらも必死に経済を回そうと多くのかたが文字通り命懸けで芸術領域の衰退を防ごうとしています。
和太鼓業界も例外なくコロナの影響を受け、演奏を主現場とする和太鼓団体はコロナにより活動休止を余儀なくされ、生活に大きな影響を受ける奏者も現れました。
私は和太鼓は「生モノ」であると考えており、映像や音源では和太鼓の良さは伝わりにくく「生で和太鼓の音に触れること」でなければ和太鼓の魅力は100%伝わらないと思っています。
生の演奏でなければ決して伝わらない五感が刺激される和太鼓体験はコロナとの相性が悪く、活動に対して足踏みしなければいけない状態となってしまったのです。
コロナ以降の変化①:和太鼓と人の接点の拡大
映像や音源では魅力が伝わりにくい和太鼓ではありますが、コロナ以降積極的にSNSや動画投稿サイトで和太鼓演奏だけでなく団体自体の魅力を発信する団体や演奏者が増加した傾向にあります。
コロナ以前でもSNSでの発信は積極的だった団体も多くいましたが、コロナ以降は活動の主現場をインターネットに移し演奏動画を以前よりも頻繁に上げ続けている傾向にあり、和太鼓の演奏ももちろんのこと団体や奏者の持つ人間性や個性がより前面に出る変化が起きました。
例えば、太鼓芸能集団 鼓童もコロナ以降積極的にSNSやYouTubeにて団体の活動を発信を開始しています。
コロナによる演奏活動が休止されていく中、ファンと繋がる方法を模索することで「和太鼓と人の接点」に大きな変化が生まれようとしています。
和太鼓奏者の人間性や団体が持つ個性が前面に出ることでタレント性が増していきました。その結果、「和太鼓の演奏を生で聴いてから和太鼓にハマる」や「和太鼓を体験するきっかけがあったことから和太鼓にハマる」のような入り口ではなく「最近好きになった面白い人が和太鼓打ちで、そこから和太鼓にハマった」という新しい入口が生まれました。
世界を拠点に活動する和太鼓集団 倭-YAMATO-もコロナ禍を受けYouTubeを通じてワークショップを配信し、和太鼓と人の接点を作り自身のメッセージも合わせて配信をしています。
倭-YAMATO-もまたワークショップを通してキャラクター性や個性が際立つようになっています。
コロナ禍における運動不足の問題に対しても【和太鼓エクササイズ】お家でできる!倭オリジナル30分フィットネスというエクササイズの動画を配信したりと、積極的に演奏ができない状況下の中でコンテンツを配信し続けています。
今までインターネット上に和太鼓関連の動画が上がることは少なくなかったですが、プロモーションビデオや編集に時間をかけていない演奏動画などが主流であったことからコロナ以降で一気にコンテンツが増加を始めました。
私はこの流れがコロナ以降も変わらずに続いていくと推測しています。
積極的に団体の個性、奏者の人間性をコンテンツにし、ファンを獲得していくことで自身の活動の幅を広げていくことが和太鼓業界でもスタンダードな考え方になり、「和太鼓と人」の接点も大きく変化していくことでしょう。
コロナ以降の変化②:ライブ配信の増加
音楽業界では演奏機会が大きく減少し、活動する場所自体が自粛や消滅していく中、コロナ時代は「無観客ライブ」として配信ライブを行うアーティストが現れ始め、和太鼓業界でも配信ライブを行い自らの手で演奏場所を増やす団体や奏者が現れ始めました。
今まで舞台による生演奏を主としており、映像や音源では和太鼓の持つパワーや魅力が伝わりにくい中、それぞれ工夫をしながら和太鼓の演奏を世界に向けて発信する動きが活発になっています。
愛知を拠点に活動する和太鼓 志多らは2020年6月14日より定期的にライブ配信をYouTubeで行っております。
一点カメラによるシンプルな構成となっておりますが、和太鼓の演奏と奏者によるMCでライブ感を出していることから通常の公演とはまた違う距離感と普段は見れない姿からより個性を強く感じられる映像となっております。
九州を拠点に世界に向けて活動するTAOもまたコロナの影響でツアーがキャンセルとなり活動機会が減少しました。
そんな中TAOはDRUM TAO YouTube Project としてYouTubeでTAOの演奏動画を配信開始しています。
カメラワークにもこだわり、見ている方に楽しんでもらえるように工夫をしていることが見て伺えます。また、過去のライブ動画を配信する等も行っており、インターネットを通じて接点を増やす活動が以前に増して増えてきた傾向にあります。
佐渡を拠点とする太鼓芸能集団 鼓童も毎年開催している野外フェス「EARTH CELEBRATION」もオンラインでの配信で3日間の開催をしています。
鼓童の演奏だけでなく佐渡の魅力や世界中のアーティストとのコラボなどを配信する構成で、コロナ以降の新しいフェスの形として革新的な取り組みを行いました。
コロナによって生演奏の機会は減ったもののインターネットを通じて誰でも気軽に和太鼓と接点を持つことができるようになりました。
まだまだ多くの課題点はあるものの、和太鼓の新しい価値として今までにない発展を遂げ始めています。
また、会場にお客さんを入れたコロナ以前の公演も感染対策をしつつ少しずつ開催される様になりました。
太鼓芸能集団 鼓童も創立40周年を記念した特別公演「童」を客入りの会場で全国ツアーを行います。
少しずつですが生で和太鼓の演奏を聴ける場も復活の兆しが見えることもあり、実際に演奏する馬が増えることで、今後の和太鼓の在り方についてもコロナを経てたどり着く到達地点は以前とは違うモノであると私は考えています。
- 2020.11.07(土) 〜2020.11.08(日) 京都府京都市 京都芸術劇場 春秋座
- 2020.11.23(月) 新潟県佐渡市 両津文化会館
- 2020.12.04(金) 福岡県北九州市 黒崎ひびしんホール 大ホール
- 2020.12.06(日) 愛媛県四国中央市 しこちゅ~ホール 大ホール~おりがみ~
- 2020.12.08(火) 広島県広島市 上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
- 2020.12.10(木) 愛知県一宮市 一宮市民会館
- 2020.12.12(土) 埼玉県東松山市 東松山市民文化センター
- 2020.12.17(木) 〜2020.12.20(日) 東京都文京区 文京シビックホール 大ホール
- 2020.12.23(水) 新潟県新潟市 新潟テルサ
チケットの購入はこちら
・チケットぴあ https://t.pia.jp/
コロナ以降の変化③:電子和太鼓で変化する音源の可能性
コロナ以前から和太鼓業界では注目されていたローランド社による電子和太鼓 TAIKO-1 はコロナの世界的流行と重なり当初より発売時期に遅れ等がでており、まだそのポテンシャルは広く発揮されていない状態にあります。
※2020年11月時点では2020年12月発売予定
電子和太鼓の登場で私は和太鼓の価値は変化すると考えています。
電子和太鼓はスピーカーからの出力を前提とした設計がされているため「音」に特化した和太鼓とも言えます。今まで「和太鼓の持つ響きの強さ」や「空気が震える臨場感」等、本来の和太鼓持つ力が強すぎるあまり、音源に残すことは困難でした。
和太鼓を音に残すとどうしても高性能なマイクが必要になります。また、マイクの持つノイズを取り除く機能が邪魔をして和太鼓の持つ深みを消してしまうこともあるのです。
しかし、電子和太鼓の登場で和太鼓の「音」に注目が集まり、質の高い和太鼓の音源を制作することができる可能性があります。
コロナ以降和太鼓は映像だけでなく音源も重要になってくると思います。
サブスクリプションの音楽配信サービスが主流になった昨今において音楽はより手軽に手に入る存在となります。その中でいくらYouTubeやSNSで露出を増やしても肝心の曲が聞けなければ意味がありません。
コロナ以降の価値では和太鼓団体も積極的に曲そのものを配信していくべきだと考えています。
そのため電子和太鼓の存在は気軽に高品質な楽曲をレコーディングできる機材として重宝するのではないかと私は思っております。
まとめ:コロナによって変化しつつある和太鼓との接点と価値観
新型コロナウイルスの世界的大流行を受けて和太鼓業界は大きな転換期を迎え今までとは違う「和太鼓と人の関係性」が構築され始めました。
①和太鼓との接点がインターネットを通じて世界中に一気に広がった。
②和太鼓団体や奏者の人間性が前面に出る様になりタレント性が増加した。
③「映像」「音源」では伝わりにくい領域をカバーするコミュニケーションの重要性
SNSや動画投稿サイトで接点を作り、そこから団体や奏者の個性に惹かれてファンになるという潮流が和太鼓業界でも重要となります。
また、SNSや動画投稿サイトは拡散力はありますが「和太鼓が好き」という人以外の層に届けるのは至難の技で、アイデア力が試される様になります。
コロナをきっかけに今まで関係性のなかった業界とコラボ動画やコラボ作品を発表し新たな層を取り込もうと発信を続けている団体も多く見受けられる様になりました。
和太鼓の持つビジュアル面のインパクトの強さを前面に活かし、他の業界とコラボする様な動きがコロナ以降はより活性化することでしょう。
コロナの流行は深刻なダメージを生み出しましたが、結果として和太鼓業界の価値観や常識を100歩以上前に進めるきっかけになったのではないでしょうか?
それぞれが思考を止めずに行動し続けることでアフターコロナの世界で和太鼓が生き残れるかどうかが決まると思います。
より良い発展のために常に考え続けて行動を起こし続けていきましょう。
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